
昨今、テレビやSNS、インターネットでは紫外線に関するさまざまな情報が発信されています。紫外線を浴びることの必要性や適切な付き合い方を紹介する報道も見られるようになりました。
一方で、「紫外線はシミやシワの原因になる」「肌老化の約8割は光老化によるもの」といった、紫外線によるリスクを強調する情報に触れる機会も多くあります。紫外線が人体へ悪影響を与えることは科学的に証明されているため、適切な紫外線対策は大切です。
ただ、その情報が広まるにつれて、「紫外線=悪者」という認識も広がっているように感じています。「少しでも日差しを浴びることを避ける・紫外線を徹底的に遮断する」などの行動が当たり前になりつつあります。しかし紫外線は、単純に悪者と断じてしまって良いのでしょうか。
ここでは、紫外線が悪者になった理由や、私たちが実際に生活している光環境など、紫外線を知ることで深く考えるキッカケになるようなお話をさせていただきます。
紫外線の危険性を示す研究結果を見ると、「DNAが損傷した」「皮膚老化が進行した」といった内容が数多く報告されています。これらの研究は紫外線の影響を理解するうえで重要です。
しかし、その研究が行われた条件にまで目を向ける機会は多くありません。
実際には、多くの研究で実験条件としてUV-A・UV-Bなどの波長ごとに分けた光源を用いて影響を評価する手法が用いられています。これは紫外線そのものの作用を明確に解析するために、他の光成分の影響をできる限り排除した実験が採用されているためです。影響を与える要因を一つに絞ることで、紫外線そのものの作用を評価することが可能となります。
ですが、その条件から得られた結果は、本当に私たちが生活している環境そのものを再現しているのでしょうか。
前項で記載したような条件は、私たちの環境へそのまま当てはめることはできません。なぜなら、私たちの世界には「紫外線のみの光環境」は人為的に作り出さない限り存在しないからです。
私たちが普段浴びている太陽光には、紫外線だけではなく、可視光や赤外線が同時に含まれています。そのため紫外線だけを照射する試験と実際に私たちが日々浴びている太陽光下の環境は同じではありません。単純な紫外線のみを照射させた試験だけで、太陽光全体が人体に与える影響を説明することはできません。
紫外線に関する研究は、影響を明確に理解するうえで非常に重要ですが、その結果をそのまま日常環境に当てはめるには慎重に考える必要があります。
私たちが実際に浴びているのは、紫外線だけではなく、紫外線~可視光線~赤外線という幅の広い波長帯の光をすべて含む「太陽光という光環境」だからです。
紫外線を浴びると、皮膚の細胞ではDNAに小さな傷ができたり、体に負担となる物質(活性酸素)が発生したりします。しかし同時に、修復しようとする仕組みを働かせます。体はダメージを受けながらも、それをできるだけ抑えたり回復させたりする仕組みを常に動かしているのです。
また、紫外線には有益な側面もあります。
紫外線を浴びることでビタミンDの生成が促され骨の形成を助けるほか、カルシウムの吸収を助けるなどの免疫機能の維持向上にも関与し、治療にも利用されています。
紫外線対策が普及しているのであれば、皮膚がんも減少しているのではないかと考えられるかもしれません。
1970年代以降、日本では日焼け止めやスキンケア製品を含む化粧品市場が大きく拡大し、紫外線対策は日常生活の一部として広く定着しました。一方で、全国疫学調査では主要な皮膚悪性腫瘍はいずれも増加傾向が報告されています。


実際、化粧品国内出荷額の推移と皮膚がん罹患数を示すグラフは右肩上がりの傾向を示しています。
紫外線対策を適切に行うことは、紫外線曝露による皮膚への影響を抑制する上で重要と考えられます。一方で、皮膚悪性腫瘍の発生には複数の要素が関係しており、化粧品市場の拡大と皮膚悪性腫瘍罹患数の推移を単純に結び付けることはできません。
紫外線は単純に避けるべきものでも、無制限に浴びるべきものでもなく、その影響を正しく理解したうえで、適切な距離感を持つことが重要になります。
紫外線は確かに、皮膚のDNA損傷、活性酸素の発生やシミやシワの原因となる光老化など、人体にとって負の側面を持っています。
一方で、私たちの体にはそれに対応する防御・修復の仕組みが備わっており、完全にダメージを防ぐのではなく、その影響を抑えながらバランスを保つように働いています。
そのため重要なのは「紫外線をゼロにすること」ではなく、「どのような環境で、どの程度の時間、どのように浴びるか」という視点です。
紫外線との向き合い方は、「避ける/浴びる」という単純な二択ではありません。生活環境の中でどの程度まで受け入れるかを判断していくことが大切です。屋外で過ごす時間、季節、時間帯、肌の状態などによって影響は変化するため、状況に応じた対応が必要となります。
また、健康面だけでなく、美容や社会的な側面も無視することはできません。「シミやシワを予防したい、健康的で若々しい印象を保ちたい」と考えることは、多くの人にとって自然な欲求です。そのため、紫外線対策は単に病気の予防だけではなく、「どのように見られたいか」という価値観とも深く関わっています。
だからこそ、「紫外線は悪いものだから徹底的に避ける」「健康のために積極的に浴びる」といった極端な考え方ではなく、自身の健康状態や生活環境、美容に対する考え方なども含め、自分にとって適切なバランスを考えながら付き合っていくことが重要です。
私たちが実際に受けている光の影響は、紫外線だけでなく可視光や赤外線、さらには温度や湿度といった環境条件と同時に作用しています。そのため、現実の生体反応や材料の変化を正確に捉えるためには、より実環境に近い形での評価・検証が必要になります。
しかし自然環境は常に変動しています。時間帯や季節、天候によって状況が大きく変わるため、同一条件での再現や比較は容易ではありません。
セリックの人工太陽照明灯は、光の特性が自然太陽光に近似しているだけでなく、ほとんど経時変化がないという点です。これにより、実際の使用環境に近い条件のもと、いつも同じ条件で試験・評価を行えるため材料や生体反応の変化を比較・検証することができます。
このような評価手法では、太陽光に近い特性を持つ人工太陽照明灯が多く活用されています。
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<参考文献>
・環境省 紫外線環境保健マニュアル2020
・環境省 紫外線による人の健康への影響 オゾン層等の監視結果に関する年次報告書
・公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A(日焼け・紫外線)
・日本化粧品工業会 化粧品統計
・国立研究開発法人国立がん研究センター がん種別統計情報:皮膚
・UVAとUVBフォトエイジングラットモデルの短期曝露における比較 – PMC
・Differential apoptotic pathways in human keratinocyte HaCaT cells exposed to UVB and UVC – PubMed
・紫外線曝露と皮膚がんリスクへの影響 – PMC
・皮膚悪性腫瘍の統計過去