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太陽先生が訪ねてみました【東京農工大学 WULED LENGGORO先生 太陽光と物質(水)の移動に関する研究】 

太陽先生が訪ねてみました【東京農工大学 WULED LENGGORO先生 太陽光と物質(水)の移動に関する研究】 

東京農工大学大学院工学研究院化学物理工学部門教授、テニュアトラック推進機構長
 WULED LENGGORO(レンゴロ) 先生

■導入製品 人工太陽照明灯スーパースポット形XC-500EFSS×1台 
■使用用途 太陽光を利用した水の移動現象に関する研究
■所在地  東京農工大学 小金井キャンパス(東京都小金井市)
■WEBサイト https://researchmap.jp/wlenggoro

1. 先生が日本に留学されるきっかけを教えてください

太陽先生:
お父様のご逝去と留学で悩まれたとお聞きしました。その時の決断は難しかったのでしょうか。

LENGGORO先生:
インドネシアのバンドン工科大学の物理工学科に進学しました。その頃、公費留学試験に合格して日本への留学が決まったのですが、ちょうどそのタイミングで父が亡くなりました。留学すべきかどうか本当に悩みましたが、最終的にはバンドン工科大学を中退し、日本へ行くことを選びました。

日本に来てからは、まず東京の日本語学校で1年間日本語を勉強しました。その後、広島大学に学部生として入学したのですが、自分のノートを同級生にコピーされるくらいには「日本語脳」が身に付いたと思っています。

学部卒業後はいったん帰国するつもりだったのですが、修士課程向けの奨学金があることを知って、そのまま進学しました。結局、博士課程まで広島大学で学ぶことになりました。博士課程修了後は今度こそ帰国するつもりでした。しかし当時はアジア金融危機の時期で、インドネシアに戻ることが難しくなってしまいました。ちょうどその頃、広島大学で教員ポストが空いたこともあり、そのまま大学に残ることになりました。

その後、東京農工大学のテニュアトラック制度を知り、40倍近い競争倍率の中から採用していただきました。それが東京農工大学へ移ったきっかけです。現在は研究・教育を続けながら、テニュアトラック推進機構長として若手教員のサポートにも携わっています。

2. 東京農工大学のテニュアトラック制度に応募されたきっかけ、決断の理由を教えてください

LENGGORO先生:
テニュアトラック制度は、もともとアメリカなどで定着していた若手研究者の自立支援制度で、日本でも導入されるようになりました。東京農工大学は2006年に、その制度をいち早く導入した大学の一つです。

当時の私は、自分自身の研究・教育の方向性を自分で決めながら進められる環境だと思い、応募しました。

3. 先生のご研究を簡単にご紹介ください

LENGGORO先生:
元々はインドネシアで物理工学を目指していたのですが、日本では化学工学を学ぶことになりました。卒論と修士課程までは、ポリマーブレンドの溶融体や固体力学の研究をしていました。

ところが、指導教授が定年退官されたため、博士後期課程へ進学する際に隣の研究室へ移ることになったんです。そこで初めて微粒子工学に出会いました。それが今の研究の出発点ですね。

以来、微粒子工学を中心に研究を続けています。研究はその後、エアロゾルや機能材料、さらには植物環境における物質移動プロセスへと広がり、自分でも面白いくらい多様になってきました。

太陽先生が訪ねてみました【東京農工大学 WULED LENGGORO先生 太陽光と土壌の関係の研究】 

4. 人工太陽照明灯が先生のご研究にどのようにかかわったのかを教えてください

LENGGORO先生:
SOLAXを導入するきっかけになったのは、2017~2018年頃に卒論研究をしていた長谷川さんでした。長谷川さんは、汚れた水を太陽光で蒸留する研究に取り組んでいました。当時は、修士課程の黒田さんが自宅から持ち込んだ赤外線ヒーターを、黒田さん自身の研究とあわせて長谷川さんも活用していたのですが、研究を進める中で、より安定した人工太陽光源の必要性を感じるようになりました。

そこで長谷川さんが強く後押ししてくれたのが、人工太陽照明灯SOLAXの導入でした。長谷川さんはその後、2019年にマレーシア工科大学へ短期留学し、クアラルンプールで開催された国際会議(RSCE)でも研究成果を発表しています。

一方で、黒田さんは修士課程で、高分子溶液にあらかじめ煤(すす)粒子を混ぜてから静電紡糸を行うという、高分子繊維を用いた水蒸発システムの研究に取り組んでいました。研究室の中では、こうした研究が少しずつ蓄積されていったんです。

面白いのはその後なんです。SOLAXを購入したのは2018~2019年頃でしたが、実はしばらくの間、本格的に活用する学生は現れませんでした。

2018年に研究室へ加わったティアラ・プラティウィさんも、当初からSOLAXを使っていたわけではありません。私が黒田さんの修士論文の内容を紹介したことをきっかけに、高分子繊維を利用した水蒸発システムに興味を持ち、2022年になって初めてSOLAXを本格的に活用し始めました。

そしてティアラさんが考え出したのが、高分子液を静電紡糸している最中に、ろうそく燃焼で発生したエアロゾル状態の煤粒子を気中で直接混合させるという独創的なアイデアでした。黒田さんが溶液の段階で煤粒子を混ぜていたのに対し、ティアラさんは紡糸と同時に気相で混ぜ込むという、全く異なる発想に到達したのです。

この研究成果は2023年に国際学術誌 Advanced Powder Technology に掲載され、APT Distinguished Paper Award 2023の受賞につながりました

私の研究室では、高価な装置を導入してもすぐに誰かが使うとは限りません。でも私は、それで良いと思っています。学生が装置に触れて、「こんなことができるかもしれない」と新しい発想を生み出すタイミングを待つことも大切だからです。研究設備は単なる測定機器ではなく、新しい研究テーマやアイデアを生み出す種でもあるんですね。

5. 人工太陽照明灯をご使用になられた感想、ご希望などを教えてください

LENGGORO先生:
安定した照射環境をご提供いただいたことで、研究成果につながりました。まずは改めてお礼を申し上げたいですね。

太陽熱蒸留の研究がひと段落した後も、人工太陽照明灯は他の学生が使っています。私の研究室では、太陽光を活用する研究テーマを選ぶ学生が2~3年に1人くらい現れます。研究室に人工太陽照明灯があるからだと思っています。実際、今年も修士の学生が土壌中の水移動に関する研究に使っています。

太陽先生が訪ねてみました【東京農工大学 WULED LENGGORO先生 太陽光と土壌の関係の研究】 

私は卒論生や修士学生の研究テーマについて、細かな指示はほとんどしません。対話と質問を通じて、学生自身が方向性を見つけられるようにしています。それが若い人の多様性や自己決定力を育てることにつながると考えているからです。一方で、博士課程では企業との共同研究が関係することも多く、研究テーマの方向性が進学時にある程度決まっている場合もあります。

また、私は Failure を単なる失敗だとは考えていません。次の行動を考えるための重要な情報だと考えています。そのため、学生には失敗を恐れずに挑戦してほしいと思っています。

学生たちは研究室にあるさまざまな装置に触れながら、「こんな研究ができるのではないか」と考えます。人工太陽照明灯もその一つです。装置があることで、それを使った研究を自然に発想するようになるんですね。

ですから私にとって研究設備は単なる測定機器ではありません。新しい研究テーマやアイデアを生み出すきっかけでもあります。その意味で、人工太陽照明灯が研究室にもたらしてくれている価値は非常に大きいと思っています。

6. 今後の目標を教えてください

LENGGORO先生:
研究は教育のためだと思っています。

学生たちが研究テーマを自分で考え、自分で決めて、自分で経験する。そのプロセスこそが、自立した人材を育てる上で最も大切だと思っています。

ここでの学びを通じて、「太陽はエネルギーの基である」ということに学生自身が気付き、その思いを実現できるような環境をこれからも作っていきたいですね。

現在は国内外の学会活動や企業との連携など学外の仕事もありますが、定年まであと8年あります。やれることを一つずつやっていきたいと思っています。

【編集後記】

太陽先生:
話の内容がとても面白く、熱心にお話しされたLenggoro先生。予定時間を大きくオーバーするインタビューになってしまいました。それでも話は尽きず、私ももっと先生のお話を伺いたかったです。

またインタビューの後、実験室にも連れて行って頂き、試験機材の事や現在の研究の事などを熱く語ってくださいました。実験室にいらっしゃった学生さんたちもとても自律していて、ご自分の研究を部外者の私にわかりやすく説明してくださいました。ここにも先生の教育者としての成果を垣間見ることができました。

人としても大変魅力的で情熱的でエネルギー溢れるLenggoro先生、近いうちにまた話を伺いに行きたいです。

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