今年の夏は、本当に暑かったですね…。
そんな暑い夏が終わると、秋の季節がやってきます。
秋になると十五夜や各地でお月見会が催されるなど「月」にまつわるイベントが多く開催されます。
夜空を優しく照らす月の光。
その正体が太陽の反射であることは有名ですが、実は太陽光と全く同じではありません。
この記事では、太陽との明るさの違いや光の成分はもちろん、月光浴がもたらす意外な効果、さらには人気漫画『鬼滅の刃』の鬼が月の光を平気な理由まで、様々な角度からその謎に迫ります。
月とは、地球の周りを公転する衛星で、夜空に見える最も明るい天体のひとつです。
これまでに人類が実際に到達した唯一の天体でもあります。
そんな月の大きさや重さ等をまとめてみました。
大きさ | 直径約3,476km 地球の約4分の1の大きさです。 |
地球からの距離 | 約38万km 地球から月までの距離には 地球が約30個入るほど離れています。 |
質量 | 7.342×10²²kg (= 73,420,000,000,000,000,000,000 kg) 想像もつかないぐらい重たいです。 |
月の公転周期・自転周期 | 約27.32日 月は地球の周りを1回公転する間に、それと同じ向きに月が1回自転をしています。公転と自転の周期が同じなので、私たちは月の同じ面しか見ることが出来ません。 |
温度 | 昼は110℃、夜は-170℃にもなります。 寒暖差は200℃以上になります。 |
月本来の色 | 茶色がかった灰色のような色をしています。 |
次に、下記3項目で月と太陽を比較します。
月 | 太陽 | |
照度(明るさ) | 約0.2ルクス | 約100,000ルクス |
照射強度 | 約0.001 W/m² | 約 1,000 W/m² |
視等級 | -12.74等級 | -26.74等級 |
※月の値は、満月の値を参考に記載しています。
※太陽の値は、真夏の太陽光の値を参考に記載しています。
照度とは光源に照らされた面1㎡あたりの明るさです。
満月の地表の照度は約0.2ルクスですが、月の光は太陽光に比べて約50万の1の明るさとなります。
照射強度とは、面に届く光エネルギーの強さを表したものです。
月の光は、太陽光に比べて約 100万分の1 の強さしかありません。
視等級とは、地球から見たときの天体の明るさ(見かけの明るさ)を表す尺度で、星の明るさを比較するために古代から使用されている天文学の基本的な考え方です。
NASAの調査によると、満月の視等級は-12.74で太陽の視等級は-26.74になります。
両者の視等級差は、-12.74 – (-26.74) = 14となります。
1等級差があると、明るさは約2.512倍変わります。
2.51214≈400,000となります。
月の光は、太陽光に比べて約40万分の1の明るさしかありません。
両者を比較すると月の光がすごく儚いものに感じると同時に、太陽光が圧倒的な力を持っているのが分かりますね。
月の光の分光特性は太陽光とおおきく変わらないと考えられています。
その理由は、月の光は太陽光の月面の反射光だからです。
両者の光を分光分布で比較します。
※分光分布…光を波長ごとに分けて、各波長がどれくらいの強さで含まれているかをエネルギー比率で表したグラフ。
弊社で測定した自然太陽光の分光分布です。
測定日時:2016年6月2日 14:00
測定場所:セリック株式会社テクニカルセンター
埼玉県越谷市
測定日時:2014年4月14日 23:16
測定場所:オランダ北ブラバント州
出典:Marcel van der Steen(2014. April.14)Spectrum of moon light
URL; Spectrum of moon light
2つのグラフは出典が違う(測定者も測定器も、測定場所も違う)ため、また縦軸のレンジや測定場所が違うため比較しにくいですが、比べみると非常によく似た形をしています。
月の光は太陽光の反射なので同じ分光特性になるはずですが、若干の違いが見られます。その原因は、月を覆う物質が作用したためと考えられています。
月の表面はレゴリス(天体表面に堆積している砂礫、そして流星物質の衝突により生成された細粒子等の総称)に覆われており、玄武岩や斜長石などの火山岩が主な成分です。
これらの鉱物は、青や紫の短波長の光を吸収しやすいという性質を持っています。月の光は日中の太陽光のような白ではなく、やや黄色がかった色に見えるのは、こういうことなんですね。
「分光分布って、なんだろう?」と気になった方は、以下の記事で基本から分かりやすく解説しています。併せてお読みいただくと、さらに理解が深まるかもしれません。
月の光を浴びることを「月光浴」といいます。
月光浴をすることで心身が落ち着きリラックスする。ということを聞いたことはありますか。
この月光浴から得られる効果をいくつかお伝えします。
① リラックス効果が得られる
穏やかな月の光を浴びることで、交感神経の緊張が緩み副交感神経が優位になります。
副交感神経が優位になると、心拍数や血圧が安定しリラックス状態になります。
※月光浴のみの効果ではなく、夜の静かな環境や月の光のような弱い光の影響と考えられます。
② 良質な睡眠を得られ、体内リズムを維持することが出来る
月の光のような弱い光に包まれることで、メラトニン分泌が妨げられず睡眠の質が良くなる傾向があるとされています。
良質な睡眠と体内リズムの維持には、太陽光やスマートフォンなどの強い光の遮断が重要という研究があります。
③ 精神的健康を得ることが出来る
自然の中で過ごす時間がストレス軽減や精神的リフレッシュできます。
月光浴はこの「自然環境の中での静かな時間を過ごす」という点で、精神の安定やストレス緩和の一助になっていると考えられます
このように様々なメリットがあります。
科学的に「月光浴そのものの効果」を直接示すエビデンスは限られていますが、
・夜の自然な弱い光に包まれること
・静かな環境でリラックスできること
・体内時計を乱さない光環境の維持を行うこと
これらが健康やメンタルに良い影響を与えることは確かです。
最後にちょっとした興味で調べてみました。
鬼滅の刃という作品を見たことはありますか?
鬼殺隊という鬼を倒す組織に所属している主人公が、鬼を倒すために努力し成長するストーリーです。
その中に出てくる鬼は、太陽光を浴びると消滅してしまいます。太陽の下では生きることは出来ず、月が出ている夜にのみ活動します。
すなわち、太陽光の反射である月の光は問題ないということになります。なのになぜ太陽光では消滅するのに月の光の下では活動ができるのか?
太陽光にあって月の光にないものが消滅する原因ではないか、という推測が成り立つかもしれません。
それはズバリ、“紫外線と赤外線”です。
太陽光と月の光の紫外線と赤外線についてまとめてみました。
・太陽光
可視光線も紫外線も赤外線も豊富に含まれています。
人体に与える影響(紫外線による日焼け、赤外線による熱)も大きいです。
・月の光
反射されるのは主に可視光であり、月の表面は紫外線や赤外線を反射するが極めて弱いです。
月の反射率は約7〜12%と低く、紫外線や赤外線は吸収されやすく反射しにくくなっています。月の表面の形状とレゴリスが影響しています。
月の表面は凹凸が多く反射した太陽光が地球に届く量が少ないため、反射率が下がります。
前述した通り、月の表面は玄武岩や斜長石などの鉱物でできています。これらの鉱物は紫外線や赤外線をよく吸収します。また表面はレゴリスで覆われているため、多孔質で粗く光が表面で乱反射せずに内部に入り込みやすい構造となっています。
加えて紫外線や赤外線の多くは、地球の大気がさらに吸収してしまいます。
2つの点から、紫外線と赤外線は月の光にはほぼ含まれていないと考えられます。
以上のことから、鬼滅の刃に登場する鬼たちは紫外線と赤外線に弱いと言えるかもしれませんね。あくまで筆者の推測にすぎませんが(笑)。
「月」や「月の光」に関する様々なことをご紹介しましたが、最後に…。
今年、月が一年を通して最も美しいといわれる「中秋の名月」は、10月6日(月)です。澄んだ夜空に浮かぶ月をじっくりと観賞するのも、素敵な秋の楽しみで良いのかもしれませんね!10月6日の夜が晴れることを祈りましょう!
・NASA「Moonlight」
・NASA「月の事実 – NASA Science」
・NASA「太陽の事実 – NASA Science」
・NASA「In Depth | Earth’s Moon – NASA Solar System Exploration」
・JAXA「もっと知りたい!?惑星のこと ~月編~ | ファン!ファン!JAXA!」
・月探査情報ステーション
・MeteorologíaenRed
・SKYWARD+
・OliNo「月光のスペクトル」
・@DIME アットダイム「月の砂「レゴリス」は宝の砂だった!?」