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照明の色温度(電球色・昼白色・昼光色など)とは?最適な照明の選び方を紹介

色温度は、光の色合いを数値として示す指標で、「ケルビン(K)」という単位で表します。現在では照明設計や写真、映像、科学計測など、幅広い分野で欠かせない指標として活用されています。

本記事では、照明の色温度の基本知識から、住宅・オフィス・店舗など、それぞれの空間に適した最適な照明の色温度まで、分かりやすく解説します。

照明の色温度とは?見え方の違いを分かりやすく解説

照明の色温度は、低いほど赤み・黄色みのある光になり、高いほど青白い光になります。

太陽光でいえば「朝日」や「夕日」の色温度は2000K前後、「昼間の太陽光」は5000~6000K前後です。つまり、朝焼けや夕焼けの光は色温度が低く、昼間の太陽光は色温度が高いと言えます。

色温度と光の色の関係

色温度の印象の違い

色温度は、数値が低いほど暖色系、数値が高いほど寒色系の見え方になります。ただし、「暖色」「寒色」というのは視覚的な印象を表すもので、実際の温度感覚とは異なる場合があります。

■2000K キャンドル・ろうそくの火

キャンドル・ろうそくの火の画像(2000Kのイメージ)

■2400~3200K 白熱電球

白熱電球の画像(2400~3200Kのイメージ)

■4000〜6500K オフィスなどの蛍光灯

オフィスなどの蛍光灯の画像(4000~6500Kのイメージ)

■10000K 晴天の青空

晴天の青空の画像(10000Kのイメージ)

また、色温度を調整することを「調色」といい、照明による空間づくりや品質判断、製品イメージの演出など、さまざまな場面で用いられています。

色温度の基本的な考え方を理解しておくと、住宅やオフィスで最適な照明を選ぶ際にも役立ちます。詳しくは「最適な色温度の照明の選び方【効果・空間別】」で後述します。

色温度(ケルビン)について詳しく解説

色温度と光の色合いのイメージ

色温度(Color Temperature)は、光の色合いを客観的に示すための指標ですが、物体の温度を示す「絶対温度:ケルビン(K)」と同じ単位が使われています。

これは、「物体の温度が高くなるほど放射される光の色が変化していく」という性質に基づいています。この関係性を説明するために用いられるのが「黒体放射」という考え方です。

黒体放射とは

物質を加熱すると、光を発します。温度の上昇に合わせて赤 → 黄 → 白 → 青白へと、発する光の色が変化します。低い温度では波長の長い赤い光が強く、高温になるほど波長の短い青い光が強くなるためです。たとえば、星の色が赤っぽかったり白っぽかったりするのも、星の表面温度の違いによるものです。

この仕組みを説明するために使われるのが「黒体放射(こくたいほうしゃ)」という考え方です。黒体とは、入射した電磁波をすべて吸収し、温度に応じた固有の光の波長分布(スペクトル)を放射する仮想的な物体のことを指します。

この黒体を特定の温度(K)まで加熱したときの光の色を基準に、その光色を温度で表したものが「色温度」です。

色温度に関するより専門的な内容は、こちらの記事もご参照ください。

色温度とは?K(ケルビン)の意味も解説!

色温度の考え方が生まれた歴史と背景

鋳造のイメージ画像

色温度の考え方は、加熱した物体が発する光の色と温度の関係を、客観的に数値化するために生まれました。

きっかけは、18〜19世紀の製鉄現場で、溶けた鉄の色を目視で判断して温度を推定していたことだと言われています。この方法は熟練工の勘に依存しており、品質を安定させにくいという問題がありました。良質な鉄を大量生産するために、熱した鉄が放つ光の色と温度の関係を測定する取り組みが始まったとされています。

加熱された物体は、温度によって異なる波長の光を放射します。この性質を説明する研究が進み、最終的に物理学者マックス・プランクが、放射スペクトルを理論的に説明する「プランクの式」を導いたことで、光の色と温度の対応関係が明らかになりました。

この理論の基盤となったのが、物理学者ウィリアム・トムソン(ケルビン卿)が提示した「絶対温度」です。現在の色温度が「K(ケルビン)」で表されるのは、黒体を一定の絶対温度(K)まで加熱したときに放つ光を基準としているためなのです。

これらの研究や取組みの結果、色温度は光の色を示す客観的な指標として定着し、今や日常的に広く利用されるようになりました。

太陽光の色温度は時間で変わる!

時間帯による太陽の色温度の変化

太陽光の色温度は、時間帯や季節によって大きく変化します。朝日は黄色みを帯びた柔らかい光で、昼になると青白い光へと変化し、夕方になると再び暖色系の光になります。

ここでは、このような太陽光の色温度の変化がなぜ起こるのかを解説します。

太陽光の色温度はなぜ変化するのか

太陽の南中高度の季節変化のイラスト

太陽光の時間帯・季節ごとの色温度は以下の通りです。

時間帯色温度(K)
朝日・夕日2000K前後
正午(夏至頃)5500K前後
正午(冬至頃)5100K前後
正午(春分・秋分頃)5300K前後

太陽光の色温度が時間帯によって変化する理由は、太陽の高度にあります。

朝夕は太陽が低く、大気を通過する路程が長くなります。大気には、可視光のうち短波長(青〜紫)を散乱しやすく、長波長(赤)を散乱しにくい性質があるため、通過距離が長いほど青い光は進行方向から外れて減り、結果として私たちには赤みの強い光が届きます。その結果、照明で言うところの低い色温度に見えます。一方で、正午は太陽が高く位置し、大気を通過する距離が短くなるため、散乱の影響が弱まり、青白い光が地表に届きます。そのため、高色温度の光として感じられます。

また、夏至の頃は昼間の太陽がより高い位置を通るため、冬至の頃に比べて色温度が高くなりやすく、冬至の頃は太陽の高度が低いため、夏至の頃に比べて色温度が低くなりやすい傾向にあります。

電球色・昼白色・昼光色とは?照明の色温度の違い

シーリングライトの昼白色と昼光色と電球色

照明の色温度は、JIS規格によって「電球色」「温白色」「白色」「昼白色」「昼光色」に区分されています。それぞれの光の色の特徴と違いについて、以下にまとめました。

▼光色(LED・蛍光灯共通)と色温度の目安

区分色温度(JIS規格)蛍光灯 型番光の特徴適した場所
電球色2600~3250KEX-Lオレンジ色の強い温かみのある光。寝室、リビング
温白色3250~3800KEX-WW電球色と昼白色の中間で、温かみがあり落ち着いた光。リビング、ダイニング、建物のエントランス
白色3800〜4500KEX-W明るさと色合いのバランスが良い自然な色合いの光。書斎、オフィス
昼白色4600~5500K  EX-N自然光に近いニュートラルな光。生き生きとした自然な印象を与える。オフィス、ダイニング、洗面台、店舗
昼光色5700~7100KEX-D青みがかったシャープな印象の光。勉強部屋・会議室・工場
※型番表記は代表例です(メーカー・製品シリーズにより異なる場合があります)。

照明別の色温度一覧

蛍光灯やLEDなどの照明(光源)の種類により、表現できる色温度の幅や特性は異なります。
※電球色・昼白色などの区分は主にLED・蛍光灯で用いられます。白熱電球やHIDランプは、製品ごとの色温度(K)で示されるのが一般的です。

ここからは、照明別の色温度を整理してご紹介します。

蛍光灯・LEDの色温度

蛍光灯の色温度のイメージ画像

蛍光灯やLEDは、前述したJIS規格(電球色〜昼光色)に沿って豊富な種類が展開されています。用途や空間の雰囲気に合わせて、好みの色温度を選ぶことができます。

蛍光灯:製品ごとに光色が異なり、本体やパッケージに記載された名称や型番の記号(EX-Lなど)によって色温度が識別されます。

LED:光色のバリエーションが幅広く、色温度を細かく選べる点がメリットです。

白熱電球、ハロゲンランプの色温度

電球の色温度のイメージ画像

白熱電球やハロゲンランプは、低い色温度の光源の代表格です。光は赤みが強く、暖かく柔らかい印象になります。住宅のリビングや飲食店など、落ち着いた雰囲気づくりに適しています。

光源(照明)色温度
白熱電球、ハロゲンランプ2400~3200K

高輝度放電ランプ(HIDランプ)

体育館の照明のイメージ画像

HIDランプは強い光を広範囲に届けることができるため、体育館、倉庫、道路灯、商業施設の高天井照明などで用いられます。種類によって色温度が大きく異なる点が特徴です。

※色温度はメーカー・製品シリーズ・用途(屋内/屋外・投光/道路灯など)によって幅があります。以下はあくまで代表例です。

光源(照明)色温度
高輝度放電ランプ(HIDランプ)蛍光水銀灯(X)代表例:3900K、4100K、5700K
メタルハライドランプ代表例:2900K、3500K、4200K、6500K、7000K
高圧ナトリウムランプ代表例:2100K、2500K、2800K

最適な色温度の照明の選び方【効果・空間別】

リビングでの照明イメージ画像

リビングやオフィスなど、空間に合わせて照明の色温度を選ぶ際は、「その空間でどのような雰囲気や効果を求めるか」を基準に検討することが大切です。

空間や目的別に、最適な色温度をご紹介します。

集中力を高める照明【勉強部屋、オフィス】

勉強部屋やオフィスでは、5000〜6500Kの高色温度の照明が適しています。青白い光は視認性が高く、脳の覚醒度が高まりやすいため、集中力を維持しやすくなります。特に作業量が多い場所や、細かい文字や部品を見る環境に向いています。

目に優しい照明【オフィス、書斎】

オフィスや書斎など、長時間の作業を行う空間では、太陽光に近い4500〜5000Kが推奨されています。コーネル大学の研究では、自然光に近い照明環境で働くことで、頭痛や眼精疲労が最大84%軽減されると報告されています。自然光と近い色温度の照明は、目の負担を抑えつつ作業効率も高めてくれます。

眠りの質を高める照明【寝室】

寝室では2500〜3000K程度の低色温度照明が適しています。暖色の光はメラトニン分泌を妨げにくくするため、スムーズに入眠しやすくなります。朝は逆に5000K前後の高色温度に切り替えると、体内時計がリセットされ、目覚めが良くなります。そのため、間接照明や調色可能な照明を組み合わせると効果的です。

絵画などの展示用照明【美術館】

絵画などの展示用照明では、低照度では暖色(2800〜3000K)、高照度では寒色(5000K以上)が好まれる傾向があります。ただ、作品の材質や表現したい雰囲気に合わせて照明の色温度を調整することもあるため、色温度に幅があるLED照明の活用も進んでいます。

撮影用照明【物撮り、写真・動画撮影】

商品などの写真・動画を撮影する、いわゆる物撮りなどの撮影用照明は、5000〜5500K程度が基準です。太陽光に近いため被写体の色再現性が高く、色の補正作業も最小限で済みます。

メイクをするときの照明【洗面台、パウダールーム、美容室】

メイクやヘアセットをする場所では、太陽光に近い4500〜5000Kが最適です。肌の色を自然に見せ、ファンデーションの色味やポイントメイクの発色が正確に判断できます。

ただし、色彩を正確に判断する必要がある環境では、色温度だけでなく演色性や照度も合わせて検討することで、より精度の高い照明環境をつくることができます。光の演色性について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

演色性とは?演色性が高い照明のメリットも解説

色温度が与える心理的な効果とは!?

色温度は、照明の明るさだけでなく、空間の印象や人の心理状態にも大きな影響を与えます。

照明の色温度の組み合わせによって、リラックスしやすい環境や集中しやすい環境を意図的に作ることもできます。

低い色温度は安心感やくつろぎの効果

電球色(2600〜3250K)や温白色(3250~3800K)など色温度の低い照明は、暖かく柔らかい光のため、安心感やくつろぎの感覚を与えます。カフェ・リビング・寝室など、落ち着きたい空間に向いており、リラックス反応を促す効果もあるとされています。

高い色温度は覚醒効果

一方で、昼白色(4600〜5500K)や昼光色(5700〜7100K)などの色温度の高い照明は、青白い光で覚醒度や集中力を高めやすい特徴があります。勉強部屋や会議室、作業スペースなど、頭をはっきりさせたい環境に適しています。

適切な色温度の照明は体内時計を整える!

起床する女性の画像

さらに、色温度はいわゆる体内時計、サーカディアンリズム(概日リズム)とも深く関係しています。

サーカディアンリズムは、普段光・食事・運動などによって調整されていますが、最も強い影響を与えるのは光だとされています。

しかし、日本の家庭やオフィスでは、夜間でも昼白色や昼光色といった高色温度の照明が使われることが多く、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げ、睡眠の質を低下させる恐れがあります。

体を自然なリズムに整えるためには、太陽光の変化に合わせて照明の色温度を調整することが効果的です。朝はやや低い色温度で穏やかに覚醒を促し、日中は高色温度で集中しやすい環境をつくり、夜は再び低色温度に切り替えて、身体が休息モードに入れるようサポートします。

色温度による心理的な効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。

色温度の心理効果とは?集中力や睡眠の質にも影響する?

色温度のまとめ

色温度は、あらゆる空間で照明を選ぶ際の重要な指標のひとつです。光の色により空間の印象を調整することができるだけでなく、物体の色の見え方にも大きな影響を及ぼします。

セリック株式会社が提供する「人工太陽照明灯」は、太陽光に近い色温度と十分な照度、そして高い演色性を実現し、自然光に限りなく近い環境を高精度で再現できます。

時間帯や天候に左右されず、常に安定した光を得られるため、色評価や製造工程、デザイン業務など、正確な色再現が求められる場面に最適です。ご興味のある方はぜひ、セリック株式会社の製品ページをご覧ください。

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